まず、初回に説明すれば良かったが、基本的な事を説明してから次回の学会発表の説明に移りたい。
基本説明1
ポリアミンとは、アミノ基を2つ以上持つaliphatic compound 脂肪族炭化水素を表す。
今回の話の中では、ジアミンであるプトレシン、トリアミンのスペルミジン、テトラアミンのスペルミンなどをメインにして話します。
ジ・トリ・テトラと言うのに、なぜポリの接頭語がつくのか?
ポリフェノールと同様にその種類の化合物が多く存在しているからだと思います。
今回注目しているのは、プトレシンの生合成経路が植物の病原菌に対する抵抗性に関与しているのではないかという点です。
植物にはプトレシン合成経路として、アルギニンを出発点とする経路とオルニチンを出発点とする経路がある。
L-Arginine → Agmatine → N-Carbamoylputrescine →
1 2 3
Putrescine
酵素名
1 Arginine Decarboxylase (ADC)
2 Agmatine Imunohydrolase (AIH)
3 N-Carbamoylputrescine Amidohydrolase
L-Ornithine → Putrescine
酵素名
Ornithine Decarboxylase (ODC)
一方、一般的に植物以外の真核生物ではオルニチン経路のみによるプトレシン合成となる。従って、真菌類などもODC経路でプトレシンを合成する。
植物において、ストレス反応等に対応するプトレシン合成に用いられるのはADC経路であるので、プトレシン合成の特異的阻害剤の影響は実験に用いたエンバク冠さび病菌(ODC経路のみ)と植物のエンバク(ODC経路,ADC経路の2経路を持つ)では異なる反応を示すはずである。
エンバク冠さび菌に感染させたエンバク植物体のポリアミンの働きは、複雑であると考えられる。
先に述べたように、エンバクの葉にエリシターである毒素や浸透圧で誘導されるポリアミンは、植物体由来の生成物であるから阻害剤を与えた場合や外生的にポリアミンを与えた場合の結果を解釈するのは植物体だけのことを考えれば良い。
しかし、感染葉を用いた場合のポリアミン量の変動は、その変動が植物体によるものであるか病原菌側の代謝により生成されたのかを考えるのは単純ではない。
次回は、罹病生の関係にあるエンバクーエンバク冠さび菌感染葉でのプトレシン合成阻害剤DFMOの作用について報告した内容を説明する。
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