2025年5月9日金曜日

Polyamine 特に植物病理学の分野において  Phytoalexin(ファイトアレキシン)生成とポリアミンとの関係について 

 これは、私の覚え書きです。

研究の発表は、論文発表ではなく学会発表程度のものですし、大昔のことなので実験データとかはありません。

ではまず書いてみましょうか。


1985年に、エンバク(oat  Avena sativa L.)という植物を用いてエンバク冠さび病菌(Puccinia coronata f. sp. avenae)に対する抵抗性発現の研究を行っていた。

抵抗性発現の指標としエンバクのphytoalexin ( アベナルミン avenalumin )の産生を観察していました。

プロトプラストを用いて実験系を確立できないかを検討している際に、浸透圧ストレスによりアベナルミンが生成誘導されているのではないかと考えられる現象がありました。

まず、植物の病原菌に対する抵抗性反応について大まかに説明します。

植物が元々持っている成分で菌の侵入を防いでいる場合と、菌が植物体に侵入してそれに対して抗菌性物質を作り菌の侵入を阻止する場合があります。(ちょっと大雑把すぎか・・)

植物のエンバクは、エンバク冠さび病菌に抵抗性反応を示す場合に様々な反応を引き起こしますが、私たちはavenaluminという抗菌性物質の生成を抵抗性発現の指標として研究を行ってきました。

avenaluminはエンバク冠さび病菌の感染に対してだけではなく、エンバクがPC-2遺伝子を持っている場合に宿主特異的毒素(victorin)を処理することでもavenaluminの生成誘導がされることが知られていた。実験に用いたエンバクは2品種で、宿主特異的毒素に対する感受性品種(Iowa×469)と非感受性品種(Iowa×424)である。

毒素victorinに対してプロトプラストがどのような反応するかを調べる実験で、対照区の毒素無添加区で2品種ともavenaluminの産生が見られました。

毒素感受性品種Iowa×469では、毒素低濃度区でもアベナルミンの産生が認められた。その際のプロトプラストの生存率は毒素無添加区と変わらず高い生存率を示していました。

では、毒素高濃度区ではどうなったかというと、プロトプラストの生存率は0%で、アベナルミンも産生されませんでした。

ここで問題となるのは、毒素無添加区の対照区でもavenaluminが産生されたことです。
これは、実験に用いた初生葉からプロトプラストを作る際の酵素による細胞壁分解などに因るものなのか、浸透圧によるものかを検討するためにまず浸透圧の影響を調べました。
浸透圧の影響を調べたのはプロトプラストではなく、初生葉の裏面表皮を剥いだものを用いて調べました。

両品種ともに浸透圧調整液(マンニトール 0 ~ 0.6M 実験で用いた濃度)0.2M以上でアベナルミンの産生誘導が観察されました。
Iowa×469では、0.4Mでアベナルミンの産生誘導が最も高く、0.6Mでは生成誘導が減少した。
Iowa×424でも0.6Mまでアベナルミンの生成誘導が観察されたが、全体的にIowa×469よりアベナルミンの産生量は少なかった。

この実験では、浸透圧により抵抗性反応の指標としてのアベナルミンが産生誘導されるかどうかを調べるためだけのもので、エンバクの数多くある品種ごとやマンニトール濃度の変化に伴うアベナルミンの産生誘導を厳密に調べたものでは無い。従って0.6Mより高い濃度については調べてはいない。

当時は、植物病理学の分野でポリアミンという言葉はあまり出てこなかった。

植物病理学関連の本でポリアミンという言葉が出てきたのは、平井先生の「植物ウイルス学」でウイルスのDNAにポリアミンが含まれるという程度だったと思う。

植物生理学の本でもポリアミンというのは記載されていなかったと思う。


エンバクにおいて、浸透圧がポリアミンの代謝に影響するという論文が発表されていたので浸透圧ストレス( osmotic stress )がavenaluminの産生に影響を及ぼし、ポリアミンが抵抗性反応に関与しているのではないかと考えた。

まず、ポリアミンの特異的阻害剤を用いてavenaluminの産生に対する影響を調べてみました。

結果は、学会発表という形で発表しました。


1986 昭和61年度 日本植物病理学会関西部会にて発表

(8)     ○○○○・大石康晴・△△△    個人情報保護のため伏せ字

アベナルミンの生成誘導機構,とくにポリアミン代謝との関係について  


Pc-2遺伝子保有エンバクのプロトプラスト系を用いて,victorin (vic)によるavenalumin (avl)の特異的生成誘導機構について検討している過程で,毒素無処理区のプロトプラストでもavlが産生,分泌されることが判明した。さらに,表皮剥離葉をmannitol液で処理すると0.15 M以上の同溶液でavlが生成され,osmotic  shockによってもavl生成が誘導されることを認めた。エンバク細胞ではosmotic shockを受けるとポリアミン代謝が増高することが知られているので,vicおよびosmotic   shockによる avl生成誘導とポリアミンの関係について調べた。

putrescine (1mM)を処理するとプロトプラスト系でのavl生成は著しく抑制され,初生葉でもvicおよびosmotic shockによるavl誘導は顕著に阻害された。cadaverineとspermidineも同様の阻害効果を示したが,これらの原因については不明である。

つぎに,ポリアミン生合成の阻害剤 DFMA(difluoromethylarginine)とDFMO(difluoromethylornithine)で処理すると,DFMAによってavl生成が顕著に阻害され,avl生成におけるポリアミン代謝の関与が示唆された。

(香大農)


今回はここまでということで。


イネ内穎褐変病かな?

ブラシンジョーカーを散布してるときに見つけた。 カメムシ対策ではトレボンを10日前に散布はしているのでOKかな。 イネ内穎褐変病かどうかははっきりしないが、出穂期高温だと発生し易いとの文献がある。 今年の暑さは異常だ。